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歯頸部・歯間部のプラークを有効に取り除くために、新しく考案したブラッシング方法(ME法)について ー第三報ー

目次

口腔衛生学会近畿中国四国地方会

平成5年6月20日(日)於:徳島大学
発表者:矢口みゆき・森野多加代(三好歯科・矯正歯科医院)

本医院は一般診療を主に、月二回の矯正診療を行っています。

また、歯科治療と口腔衛生管理が不可分なことから、開業以来12年間、リコールによる患者管理を行ってきました。

特に、歯周病の患者ではプラークコントロールが重要なことはいうまでもなく、ブラッシングには歯間ブラシの併用も指導してきました。

しかし、全ての患者において歯間ブラシが常に使用されているわけでなく、使用回数や定着率には問題がありました。

また、歯周病でなくとも、歯ブラシ単独で今以上の歯頚部歯間部のプラークが除去可能なブラッシング方法には魅力があり、ME法の導入を考えました。

昨年の、第2報では、歯科衛生士を対象としたME法の効果について報告しました。

今回、当医院おけるリコール患者に一定期間指導し、そのブラッシング効果を検討しましので、報告します。

被験者の情報

左図
右図

被験者は左図に示しますように、平成5年2月のリコール患者で、無作為に選出し、結果の得られた16名、内、男性6名、女性10名です。

年齢は17才から53才で平均37才、初診よりの通算年数は1年から12年で平均7年となっています。

右図にその詳細を示します。DH欄のA、B、Cはそれぞれ担当歯科衛生士を示します。

実施方法 観察記録用チャート

左図
右写真

左図は実施方法を示します。

計3回来院とし、初回にME法を指導、2週間後に再指導、その1か月後に評価を行うこととしました。

考案者を含む三名の歯科衛生士は、初回から3回目まで同じ者が man to man で指導にあたりました。

右写真が、各回ごとにカラー分けした記録用チャートです。

進行具合が色により即わかるようにしました。

ブラッシング観察はチェックする項目をもうけ、部位ごとの具体的な磨き方が記録されるように作られています。

まず、一回目に従来のブラッシングを観察した後、ME法指導前のデータとして、スライド撮影、次にEPP、出血度、O‘leary PCR(以下、オレリーと略します。)の診査をします。

なお、オレリーは本来4分割ですが、一部改変し6分割としました。

2回目にはME法の再指導のみを行い、3回目は患者のME法の習得度を観察後、スライド撮影、指導後データ(EPP、出血度、オレリー)を採取します。

指導に用いた 模型・歯ブラシ・チャート

左写真
右写真

左写真の患者の指導に使用したME模型とME歯ブラシです。

ME模型では、例えば、歯間部を頬側唇側で”くぼんだ三角錐“、舌側口蓋側で”開いた三角錐”と表現し、cuttingしてあります。

歯牙の歯頚部歯間部の形態をプラークが残りがちである凹面としてより強調することで患者のブラッシングすべき箇所が強調されていると思われます。

また、ME歯ブラシは、ちょうど第一大臼歯の歯冠を十分覆うぐらいのおおきさで、head部が直角に植毛された、幅4列、長さ5段、毛足10mmの硬めの歯ブラシです。

従来の歯ブラシに比べ、コンパクトで奥への挿入が容易になったと思われます。

右写真は、ME法を絵によって解説した指導用チャートです。

指導の内容に均一性をもたせ、患者の側ではブラッシング方法のイメージがわくように配慮しました。

プラークスコア・出血度の変化(担当者別)

左図
右図

左図は全被験者のオレリーの変化を示します。また、グラフでは担当歯科衛生士別にカラー分けを施しています。

初回時の最大値は92%、最小値は34%で、平均値65%でした。

3回目の最終回最大値は51%、最小値は13%で、平均値28%となりました。

平均値で65%から、28%の改善が見られました。

右図は出血度の変化を示しています。

初回時の最大値は37%、最小値は3%で、平均値16%でした。

最終回最大値は24%、最小値は0%で、平均値8%となりました。

平均値で16%から8%の改善が見られました。

患者A 歯肉の改善例

左写真
右写真

実際の症例での変化を示します。

患者さんは、46才の女性で、通算年数は11年。

使用歯ブラシはペリオⅡのM、清掃補助用具にはフロスを使っていました。

左写真が指導前の下顎右側臼歯部舌側です。

ブラッシングは、歯肉側から歯間側に向けて歯ブラシを回転させて使用した後、歯面に直角に再度歯ブラシを当て、小さな横磨きを加えるといったものでした。

Crownマージン部に残存プラークが見られます。

右写真は、ME法に変更した指導後の写真です。

口腔前庭側では歯冠側に歯ブラシを45度であて、舌側口蓋側では近心と遠心からの2方向の磨き分けをしています。

残存プラークは除去され、消失していたスティップリングも見られるようになりました。

患者A プラーク改善 (6分割スコア表)

左図
右図

左図はこの患者さんから採取した指導前のオレリースコアーを示します。

右図はその指導後のスコアーです。指導前では舌側口蓋側と歯間部に見られたプラークが、指導後、右側の2番3番あたりにのみ見られるようになりました。

患者A 出血の減少 (6分割スコア)

左図
右図

左図はこの患者さんから採取した指導前のEPP、出血度を示します。

右図はその指導後のEPP、出血度です。

右上6番の近心口蓋に見られた4mmのポケットと出血が改善されています。

軽い捻転の入っているような大臼歯では、口蓋側を近遠心2方向から磨くことで、より良い結果が得られました。

患者B 歯肉の改善例

左写真
右写真

次の症例は、53才の男性で、通算年数が1年の患者さんです。

左写真は指導前を示し、右写真は指導後を示します。

オレリースコアーは77%から22%と大きく改善されました。

プラークは除去され、EPP値そのものは6点法の計測点からはずれていたため、数値としての変化は無かったものの、6番近心根舌側歯頚部は明らかにポケットの減少がみられ、歯肉は健康な状態を取り戻しつつあります。

プラーク除去に有効 残存プラークへの対策が明確
誰が指導しても同様の効果が得られる

ME法では、従来のブラッシングでは落ちにくかった臼歯部の舌側歯頚部において、オレリーの著しい改善が見られました。

また、歯間ブラシに頼るような歯間空隙がある場合においても、歯ブラシ単独にかかわらず、プラーク量は減少していました。

また、部位ごとの歯ブラシの挿入方向や 刷掃角度が決まっているために、磨き残しのあった場合、対策が講じやすいのも特徴の一つだと思われます。

このことは、方法を理解していれば、指導者による大きなばらつきはみられないということにもつながります。

ME法は、歯間部、歯頚部のプラーク除去に有効であると思われます。

今後、これらの症例の経過観察を行うとともに、症例数を増やしていきたいと思います。

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