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歯頚部・歯間部のプラークを有効に取り除くために新しく考案したブラッシング方法(ME法)について ー第二報 ー

日本口腔衛生学会近畿・中国・四国地方会
平成4年6月21日
恵比須美知代

昨年(平成3年)の本学会において、一般的な永久歯列に対する、歯間部への効果的なブラッシング方法として、ME法を報告しました。

その効果について、さらに検討しましたので報告します。

目次

ME歯ブラシ

第一大臼歯の大きさと形態を基に設計
四角形 4列幅9ミリ 5段長さ14~15ミリ 毛の長さ10ミリ 

左写真
右写真

ME法について、再度、紹介いたします。

本方法は、使用歯ブラシの形態も大切です。

左写真に示すように、

幅-4列、長さ-5段、毛足-10ミリで、先端が直角に植毛されています。

歯ブラシの大きさにつていは、それぞれ歯牙を基準にしています。

例えば、右写真に示しているように、

長さは、最大歯牙である・下顎第一大臼歯の・歯冠幅を十分に覆い、かつ、隣接する両歯牙の咬頭から・はみ出ない長さです。

歯列模型(歯の外側)

従来の模型の形態

ME法指導模型の形態

次に、歯頚部の形態ですが、左写真に示すように、

従来の模型では、唇側・頬側の 歯頚部 は、このようになっています。

右写真は、ME法を理解しやすいように作った 模型です。

唇側・頬側を形態学的にみて。歯間部における形態を、

このような「くぼんだ三角錐(閉じた三角錐)」として表現しています。

「くぼんだ三角錐」へのブラシの当て方

歯の外側を磨くときは歯頚部に45° 毛先は歯の方向
毛先付近の脇腹を少し圧接し小刻みに動かす

左写真
右写真

左写真は、「くぼんだ三角錐」の磨き方として、上顎・前歯部の例です。

歯ブラシの毛先が、歯頚部に45°、脇腹を歯肉に当てます。

続いて、右写真に示すように圧迫振動させると、毛先が歯間部にあたります(入り込みます)。

上下の唇側、頬側および、前歯舌側においても同様に行います。

歯列模型(歯の内側)

従来の模型の形態

左写真

ME法指導模型の形態

右写真

次に示しますのは、臼歯・舌側部です。

左写真は、従来の模型における、臼歯・舌側部です。

歯頚部のラインは、近遠心方向の、直線と見なしがちでした。

右写真に示すように、

ME法では、臼歯・舌側部は、

このように歯頚部を ジグザグ のラインとして認識し、

「開いた三角錐」と表現しています。

この上下・臼歯における舌側部が、今までのイメージと・一番、異なるところです。

歯の内側は「開いた三角錐」

近心面・遠心面の2面を認識 毛先を直角にあてる

近心面は側面の角

左写真

遠心面は先端の角

右写真

臼歯舌側の、開いた面に対しては、歯頚部に毛先を・直接当てることができます。

左写真に示すように、近心は、このように入れます。

右写真は、遠心です。

歯ブラシを反対側より入れ、頭で引っ搔くように使用します。

歯の外側にある「開いた三角錐」

最後臼の歯遠心部 歯ブラシの挿入方向が重要
毛先を直接 直角に当てることができる

左写真
右写真

また、左写真に示すように、

最後・臼歯・頬側の遠心部にも、「開いた三角錐」の一面が見られ、歯ブラシの毛先を直接、直角に当てることができます。

右写真に示すように、歯ブラシを当てます。

このように、歯牙面に、直接毛先を直角に当てるためには、歯ブラシを持つ腕の方向が、

重要な要素です。

以上が、概略です。

ME法ではオレリースコア10%達成が可能

(歯科衛生士・30名)
スクラビング・毛先磨き  ME法による歯磨き

今回、口腔内への 知識と関心の高い、歯科衛生士30名を対象に、ME法実施前後のプラークの変化を調べました。

実施前は、主にスクラビング法と、いわゆる「毛先磨き」の併用で、オレリースコアの平均は40.2%でした。

ME法・実施後は、30症例すべてにおいて減少し、スコアの平均は10.2%です。

ME法のブラッシング効果の一例

スクラビング・毛先磨き
歯間部にプラーク残

左写真

ME法による歯磨き
歯間部のプラーク除去

右写真

これは、その一例です。

左写真は、実施前の右下・舌側です。

よく磨かれていますが、歯間部プラークが残っています。

右写真は、ME法実施後です。

このように歯間部プラークが除去されています。

ME法のブラッシング効果(1)

(歯間部プラークを唇側・舌側分けて記録)
折れ線:従来の方法  棒グラフ:ME法

右上の唇・頬側

左図

右上の口蓋側

右図

また、ME法実施前後のプラーク変化を詳しく評価するために、オレリーPCRを一部改変し、その特徴を調べてみました。

(PCRは一歯牙を4分割してスコアをとるが、近心部および遠心部を頬側と舌側に分けて6分割してカウントすることにより、プラークの残存状況を明確にした。)

一般的に、磨きにくいとされている、利き手側のデータを出しています。

左図は、右上の唇側・頬側、右図は、右上の口蓋側です。

それぞれ、一歯牙ごとに状態を示したものです。

横軸に歯牙、縦軸はプラークの残った割合です。

いづれも、折れ線グラフは(ME法の)実施前、棒グラフは(ME法の)実施後の(残存プラーク)の結果です。

赤は遠心部、青は近心部、緑は中央部をあらわしています。

折れ線グラフに示されるように、実施前は、どの歯牙においても、

緑の中央部プラークに比べ、赤・青の歯間部プラークが高くなっています。

左図にありますように、頬側では、

後方臼歯のみ、多少、高くなっています。

しかし、右図にありますように、

舌側部では、臼歯全体の歯間部プラークが80%近くあり、

大変、高くなっています。

実施後は、棒グラフに示されるように、すべての部位で減少しています。

左側も同様の傾向です。

ME法のブラッシング効果(2)

(歯間部プラークを唇側・舌側分けて記録)
折れ線:従来の方法  棒グラフ:ME法

右下の唇・頬側

左図

右下の舌側

右図

左図、右下・唇側頬側、右図は、右下・舌側です。

折れ線グラフに示されるように、実施前は、どの歯牙においても、緑の中央部プラークに比べ、やはり、赤(遠心部)と青(近心部)の歯間部プラークが高くなっています。

左図にありますように、頬側では、後方臼歯ほど高くなっています。

右図の舌側では、臼歯部全体において、緑の中央部も高く、赤、青の歯間部プラークでは、最大値で90%近くなっています。

下顎、臼歯舌側が、全体のスコアを引き上げている、要因であることがわかります。

実施後は、棒グラフ⑵示されるように、すべての部位で減少しています。 舌側臼歯部の遠心が高い傾向ですが、これは、右側のみです。

ME法ではオレリースコア10%達成が可能

スクラビング・毛先磨き
臼歯舌側の歯間部プラーク

左図

ME法による歯磨き
三角錐の変化を活用

右図

以上のことから、左図に、示しているように、

従来の方法では、歯頚部プラークは平均40%と高率でした。

オレリーPCRを、6分割に改変してカウントすることにより、プラークの残りやすい部位が明確になりました。

  1. 歯間部に存在するプラークが除去しにくい。
  2. また、頬側に比べ、舌側のプラークが高い状態をしめしています。
  3. 特に、臼歯・舌側部の、歯間部プラークが、全体のスコアを引き上げる要因であることが、わかりました。

右図に示しているように、このような、一般的に残りやすい、舌側および歯間部プラークが、ME法では、除去しやすく、スコアが10%に減少しました。

ME法まとめ

三角錐の変化
歯列には、「くぼんだ三角錐」が存在し、部位によって形状変化が見られます。
歯ブラシの当て方は、三角錐の形態変化に応じて、具体的でより簡単になっています。

「くぼんだ三角錐」での、毛先のなじみ
脇腹への側方圧で、くぼんだ形態に入りやすく、毛先の一点一点が歯牙曲面と同様の形状になります。

「歯ブラシの挿入方向と腕」の位置
今まで、最も残りやすかった、臼歯舌側部は、近心・遠心の2面が明確になり、別々に毛先を当てることが合理的です。
歯ブラシの挿入方向を変えることにより、簡単にそれぞれの歯面に毛先をあてることができます。

患者指導においては、歯ブラシの挿入方向を決める、腕の位置関係が重要で、具体的で明確な指導が可能です。

今後は、矯正患者や、その他、種々の歯列に対する応用を広げていきたいと考えています。

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