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歯頚部・歯間部のプラークを有効に取り除くために 新しく考案したブラシッング方法(ME法)についてー第一報ー

平成3年6月23日
第2回日本口腔衛生学会 近畿・中国・四国地方会

歯周病には、歯頚部のプラークが大きく関与し、現在、二次予防として種々の磨き方が指導され、それぞれ効果を上げています。

今回、歯頚部・歯間部のプラークを有効に取り除くために新しく考案したブラシッング方法(ME法)は、特殊な症例へのブラッシング指導ではなく、日常的な一次予防として、また、一般的な永久歯列への、歯の磨き方として、考えています。

目次

すべての歯間部には 三角錐が存在する

左写真
右写真

歯列を模式的に考えた場合、すべての歯間部において三角錐が存在すると考えました。

左写真のように、三角錐は歯間乳頭の一面(緑)、隣接する両歯牙の二面(黄・青)で構成されると考えられます。

色調の関係で、歯間乳頭部分に緑を使用しています。

このような三角錐を、「くぼんだ三角錐」または、「閉じた三角錐」と表現します。

右写真は、前歯から臼歯部の側方観ですが、このようになっていると考えられます。

すべての歯間部には 三角錐が存在する
臼歯部舌側は「開いた三角錐」

左写真
右写真

左写真、上下の臼歯部舌側におけるものです。三角錐が、歯牙からはみ出すように存在している点が、ほかの部位と異なり、特徴的です。

これを、「はみ出した三角錐」または、「開いた三角錐」と表現しています。

歯間部は、このように三角錐の底が開くような状態になっています。

右写真は、上下・前歯部・舌側においては、「くぼんだ三角錐」が存在しています。

※当初は上下前歯舌側に「くぼんだ三角錐」と考えていましたが、舌側における「くぼんだ三角錐」は上顎前歯のみと修正した。

「くぼんだ三角錐」における歯ブラシの毛先と脇腹の位置

左写真
右写真

左写真は、前歯から臼歯部にかけての正面観ですが、このようになっていると考えられます。

右写真は、「くぼんだ三角錐」における歯ブラシの当て方についての、毛先と脇腹を当てる、位置・原則を示しています。

乳頭歯肉の赤い部分、模型では緑を用いています。この部分には、歯ブラシの脇腹が当たるようにします。

隣り合う歯牙の、黄色と青色の部分、には毛先が当たるように用います。

4列5段 毛の長さ10ミリ 方形

左写真
右写真

今回、ME法に用いた歯ブラシは、4列、5段、毛足10ミリのものです。

歯ブラシの先端が、直角に植毛された形態も、大切な要素です。

では、実際にどのように用いるか、模型上で説明します。

左写真、既存の歯ブラシを改造して、必要な歯ブラシを作りました。

「くぼんだ三角錐」における
歯ブラシの毛先と脇腹の位置

左写真
右写真

左右写真は、「くぼんだ三角錐」の磨き方として、下顎前歯部に歯ブラシを当てているところです。

左写真のように、毛先を切端方向に向け、歯頚部45°に当てます。

右写真のように、脇腹で歯肉を圧迫し、振動します。(毛先が歯と歯の間に入り込みやすい)

切端方向に心もち移動させながら小刻みに動かします。

もし、歯と歯の間に、ブラシの毛先が入っていくような感じがしたら、逆らわないで毛先の方向へ動かします。

上顎前歯部口蓋側 「くぼんだ三角錐」
歯ブラシの用い方

左写真
右写真

左写真、上顎前歯部口蓋側については、歯ブラシは立てて使用します。

右写真のように、歯ブラシの先の脇腹部分を、歯肉に押し当てるようにし、同様に磨いていきます。(押し当て、小刻みに引き戻すように動かします。)

臼歯部舌側は「開いた三角錐」
それぞれの面に毛先を当てることができる

左写真
右写真

臼歯部舌側の歯間部は、「はみ出した三角錐」で「開いた三角錐」となっていますので、近心と、遠心と別々に磨くほうが効率的です。

左写真は、遠心面、歯ブラシ・先の方の脇腹が歯肉に、毛先1~2列が遠心面にあたります。(歯ブラシの先でひっかけるよう、掻き出す感じ)

右写真は、近心面、歯ブラシ・サイドの脇腹が歯肉に、毛先1~2列が近心面にあたります。(歯ブラシの再度の角を使い上下に動かす)

臼歯部舌側は「開いた三角錐」
それぞれの面に毛先を当てる2方向磨き分け

左写真
右写真

左右写真のように、このような近心、遠心への歯ブラシの挿入方向も、重要な要素です。

左写真、遠心面は、歯ブラシを少し寝かせるようにして、1歯づつ引っ掻きだすように動かします。

右写真、近心は歯ブラシを立てるような感じで入れ、縦磨きの要領で、縦にごしごしと動かします。(歯ブラシのサイドの角を使う。)

1歯づつ面倒なように思いますが、近心から、4567と順次磨き、歯ブラシを寝かして、7654と遠心を磨いてくれば、一連の流れができます。

上顎の、臼歯口蓋側においても同様で、近心・遠心に分けます。

最後臼歯の頬側からの遠心隅角部
「開いた三角錐」の変形

左写真
右写真

左写真は、最後臼歯、頬側の遠心の隅角部(黄色の部分)と、遠心面(赤色の部分)の2面が存在すると想定したものです。

「開いた三角錐」の変形とみなしています。

右写真は、隅角部に当てているところ。

続いて、横からの突っ込み磨きの要領で、もう一面、左スライドの赤い部分を磨きます。

ME法による歯磨きのみの変化
補助用具未使用 機械的清掃未実施

左写真
右写真

左右写真は、実際に、この方法により指導を行った例を紹介します。

左写真は、指導前の口腔内。

右写真は、指導後の口腔内。

清掃は歯ブラシのみで、歯間ブラシ・フロス等補助用具は使用していません。

また、スケーリング等機械的思想も行わず、ME法による清掃のみで変化した状態です。

指導後は、歯牙全体に光沢が出てきて、歯頚部歯肉が引き締まってきました。

歯肉より出血がなくなり、口臭がしなくなりました。

以前は、口臭で他人に迷惑をかけないために仁丹を噛んでいたそうですが、今はしなくなったので、すっかりやめてしまったということです。

ME法によるプラークの減少
オレリースコアと部位別の比較

左図
右図

このブラッシング方法のプラーク除去効果を知る目的で、18名に指導を行いました。(歯科衛生士8名、一般10名)

歯頚部、歯間部プラークの判定には、O’Leary法を用いました。

左図、結果、左から右への傾斜が示すとおり、指導前と指導後は明らかにスコアが減少しました。

18例すべていおいて、減少しています。

全体としては、指導前61%から指導後21%に減少しました。

右図、プラークの残った各部分をみますと、

指導前にスコアを引き上げているのが、臼歯近遠心および前歯の近遠心の歯間部です。

指導後は、前歯・歯間部、臼歯・歯間部のプラークが、この方法によって、明らかに減少していることが、わかります。

ME法まとめ

  1. 歯牙形態をイメージしやすいように、歯間部を三角錐に想定し、立体像を視覚的に表現した。
  2. 三角錐の有り方の変化によって、歯ブラシの当て方が変化する。
  3. 全顎の各部位毎に、具体的な歯ブラシの当て方がある。
  4. 歯ブラシは頭部が直角植毛で、4列、小型なものがよい。
  5. 一般的に除去困難な歯間部プラークの除去効果が高い。
  6. ブラッシングに慣れることにより、短時間で全顎刷掃できる。

    *今回の発表にあたり株式会社ニッシンの模型を使用しました。
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