新しい歯ブラシ
『Michiyo8』・『Michiyo4』
歯科衛生士の考案した歯ブラシ
歯にフィット・手にしっくりの設計!
まずは、一度お試しください
-口腔内に存在する第一大臼歯の計測値より-
日本人歯科間工学会/日本人間工学会歯科部会
1993年(平成5年)1月30日(土)
於)大阪歯科大学
発表者)恵比須美知代
歯ブラシは、頭部・頸部・把持部からなり、そのなかでも、頭部の形態と大きさは、本来の歯を磨くという目的に最も重要な部分です。
本報告は、成人の一般的な永久歯列において、特に歯頸部・歯間部を考慮し、口腔内全体で動かしやすい歯ブラシの刷毛部の寸法についての提案です。
長さ27mm 毛の長さ12~14mm
左写真は、厚生省*¹の出しているパンフレットで、一般的な歯ブラシの大きさを示しています。
「歯ブラシには選ぶ基準がありますが、一人一人の口にあったものを選ぶことが大切です。」と記載されています。
その基準は長さ27mm、毛足12~14mmとなっています。
ブラッシング方法については触れていませんが、毛足の長さから、ローリング法のような脇腹磨きを想定しているように思われます。
これは、昭和40年ころに国の出した選択基準が基になっています。
しかし、基準はあるが、どのように自分にあったものを選ぶか、ということが明確ではありません。
また、提示された基準の根拠も不明です。
右写真は、最近よく用いられている歯科医院専用歯ブラシです。
ただし、左端は市販歯ブラシで、ほぼ厚生省基準にあったものです。
中央にある5本の歯ブラシは、おおむね長さが20mm前後、毛足は9mm前後となっています。
右端は、バトラー311です。
このように小型化に加え、形態の変化も見られます。
これらは、最近の主流である、例えばスクラビング法のような、毛先磨き用と思われます。
このように指導するブラッシング方法によっても、変化していると考えられます。
しかし、こうした変化についても、根拠となる明快な要素は提示されていません。
かつて、歯の手入れというのは、木の楊枝などで一本一本汚れを取っていたということですが、現在の歯ブラシのような形となり、効率的に磨くようになったと思われます。
しかしながら、結局
「歯は一本づつ磨くのが、・・効率的である」ということに気づいてきたのが、現在の小型化傾向ではないかと考えられます。
*1・2001年1月中央省庁編成により、厚生省と労働省を廃止、統合して厚生労働省。
そこで、「ブラッシング方法に左右されず、自然な運動によって、部位を問わず、歯牙面全体を清掃することができる」、過不足のない刷毛部の寸法を求めたいと考えました。
上記左に示しますように、「刷毛部の大きさ」の根拠について検討しました。
まず、「一般的な永久歯列を想定」
次に、「歯ブラシの自然な挿入方向が、歯列の内側と外側では異なる」ことと、
「最大歯牙である第一大臼歯」に着目し、大きさの根拠としました。
右写真は、臼歯舌側部に歯ブラシを挿入しているところです。
舌側部では、歯ブラシが前歯の存在によって、このように自然な角度が生じます。
このような、刷毛部と歯牙との関りや、
最大歯牙である第一大臼歯を適正に磨けることを考慮しました。
これらを踏まえ、口腔内に存在する第一大臼歯を中心に計測調査を行い、かつ、歯ブラシの運動方向についても考慮し、刷毛部各部の寸法について検討しました。
左右図は、刷毛部各部の大きさと、第一大臼歯との関係を示しています。
左図に示しますように、頬側では歯列に対し、歯ブラシの長辺が平行に当たります。
そこで、歯ブラシの長さ(長径)は、最大歯牙である第一大臼歯の近遠心径を十分に覆い、かつ隣接する両歯牙の咬頭よりはみ出ない長さとしました。
右図に示しますように、舌側においては斜めに入るため、歯ブラシの幅は、第一大臼歯の舌側の歯頚部中央から、遠心の歯冠頂までを十分に覆う必要があると考えました。
①第一大臼歯の近遠心幅の計測
②両側歯牙の咬頭間の距離の計測
⑥ ①②から、第一大臼歯を覆い、両側の歯牙に邪魔されない中間値を計算上求めた
歯牙の計測結果、およびブラシ部分の、長さの寸法についての提案です。
歯ブラシのブラシ部分の長さについては、左右図に示すように、①第一大臼歯の近遠心径の計測。②隣接する両歯牙の咬頭間の距離を計測。
⑥の中間地を計算で求めました。 平均14.8mmで、歯ブラシの運動を考慮し、14~15mmとしました。
歯牙の計測結果、およびブラシ部分の幅の寸法についての提案です。
歯ブラシのブラシ部分の幅については、左右図に示しますように、
①第一大臼歯の近遠心径の計測。③歯冠の高さを計測。
①③からピタゴラスの定理を用い⑤の対角線の距離を求めました。
平均7.9mmで、これを充足し、かつ歯ブラシで奥から手前に引く運動を無意識に行っても、遠心部を十分覆うように1mmのゆとりを加え、9mmとしました。
④第一大臼歯の唇舌径の計測/*④の計測値から1mm引く
歯牙の計測結果、およびブラシ部分の毛足の長さの寸法についての提案です。
歯ブラシのブラシ部分の毛足の長さについては、左右図に示しますように、
歯間部への毛先の到達を考え、④第一大臼歯の頬舌における厚みを計測しました。
平均11.3mmを参考にし、そこから1mmを引き10mmとしました。
歯間部に入り込む長さは必要だが、突き抜けるまでの長さは不要と考えました。
左写真は、本計測調査結果に即した歯ブラシの形態です。
長さ15mm-5段、幅9mm-4列、毛足10mmの整列で、先端の両角が直角に配列された歯ブラシです。
現在(平成5年)、この大きさと形態を備えた歯ブラシが全くないため、現有歯ブラシを一部改良したものを提示しています。
右写真は、本考案の歯ブラシを下顎第一大臼歯の頬側に当てているところです。
歯牙表面ばかりでなく、毛先が歯頚部・歯間部にも十分到達しています。
左右写真は、頬側臼歯部に歯ブラシを当てているところです。
左写真は、長さ22mmの歯ブラシです。
右写真は、長さ14mmの、本考案の歯ブラシです。
左右写真は、舌側臼歯部に歯ブラシを当てているところです。
左写真は、長さ22mm、幅7mm-3列の歯ブラシです。
右写真は、長さ14mm、幅9mm-4列、本考案の歯ブラシです。
本考案の歯ブラシの大きさと形態が、歯に対して、過不足のない大きとして提案しました。
過不足のない大きさであるかどうかは、実際に使用し、その効果を判定する必要がありますが、平成2年から継続的に使用して、「誰が、そのように用いても、従来のどのブラシより、有効である。」と、私は確信しています。
歯ブラシは、「道具」としての、求められる機能を発揮するため
形態と大きさは、機能に応じられる根拠の提示が重要
歯ブラシを考えるとき、清掃効果・日常的な生活動作・個人の歯列や病状の変化に対応できることが要求されます。
「求められる機能」に示しますように、一般的な歯ブラシの機能については、①部位を問わず、歯牙面全体に到達する ②自然な運動での操作性が良い ③ブラッシング方法に左右されない ものを目指していきたいと思います。
歯科医師、歯科衛生士は、国民の口腔衛生に関わる専門職であり、医療職です。
その道具としての歯ブラシには大きな責任があります。
道具には、その機能と対象に合わせた、根拠のある大きさや形態が必要です。
「 刷毛部の大きさを決める要素 」に示しますように、
今回は「成人における一般的な刷毛部(ブラシ部)の大きさ」について、「歯ブラシの自然な挿入方向」と、「最大歯牙である第一大臼歯」に着目し、ブラシ部の大きさの根拠としました。
そして、実際に口腔内に存在する歯牙計測を行い具体的な大きさを提示いたしました。
本報告に対する、皆様のご助言やご意見をいただけますようお願いいたします。