新しい歯ブラシ
『Michiyo8』・『Michiyo4』
歯科衛生士の考案した歯ブラシ
歯にフィット・手にしっくりの設計!
まずは、一度お試しください
平成5年9月5日(日)
兵庫歯科学院専門学校 学院学会
発表者: 森野 多加代
本医院は、一般診療を主に月二回の矯正治療を行っています。
また、歯科治療と口腔衛生管理が不可欠なことから、開業以来12年間、リコールによる患者管理を行ってきました。
最近では、重症の歯周病患者が多く、いづれも歯間部のポケットが深く、歯間部のプラークコントロールを重視しなければならないと考えていました。
歯周病患者のブラッシングには歯間ブラシの指導もしていますが、常に使用されているわけでなく、使用回数や定着率には問題がありました。
ME法は、歯ブラシ単独で、今以上の歯頚部、歯間部のプラーク除去が可能なブラッシング法です。 歯周疾患の改善のため、また日常的な一般予防としてME法の導入を考えました。
ME法について説明します。
ME法では、歯間部の形態は、歯間乳頭の1面と、隣接する両歯牙の2面からなる三角錐であり、部位により「くぼんだ三角錐」と「開いた三角錐」が存在すると考えています。
左写真の上に示しますのは、「くぼんだ三角錐」です。
上下の唇側、頬側と、上下前歯舌側に存在します。
左写真下の左右に示しますように、歯ブラシは三角錐の底に毛先が届き、かつ歯肉への過剰な刺激を避けるために、毛先が歯牙、脇腹が歯肉にあたるように用い、小刻みに動かします。
右写真の上に示しますのは、「開いた三角錐」です。
矢印が示しますように、三角錐が開いています。
上下左右の臼歯舌側に存在します。また、最後臼歯、頬側遠心部にも存在します。
右写真の下の左右に示すように、近心と遠心の2方向磨き分けをします。
歯ブラシの挿入方向を変えることにより、近心と遠心の歯面に毛先が直接当たります。
このように三角錐の形状に合わせた、歯ブラシの当て方が具体的です。
今まで除去困難だった歯間部プラークがよく落ちることから、ブラッシング後に爽快感があり、患者さんへの動機づけに役立つと報告されています。
また使用歯ブラシは、頭部が直角に配列された4列で、大きさは、歯牙を基準にした小型のものが使用されています。
以上が概要です。
本方法は、恵比須により考案され、平成3年日本口腔衛生学会 近畿中国四国地方会で発表されました。
今回、当医院におけるリコール患者に一定期間ME法指導し、そのブラッシング効果を検討しましたので、報告します。
左図に示しますように、被験者は、平成5年2月のリコール患者を無作為に選び結果の得られた16名、うち男性6名、女性10名です。
年齢は、17歳から53歳で平均37歳、初診より通算年数は1年から12年で平均7年となっています。
右図は、その詳細を示しています。DH欄のABCは担当歯科衛生士を示します。
左図は、実施方法を示します。計3回来院で、初回にME法指導、2週間後に再指導、1か月後に評価を行いました。
初回から3回目まで、考案者を含む3名の歯科衛生士がマンツーマンで指導にあたりました。
まず初回に、従来のブラッシングを観察した後、ME法指導前のデータとしてスライド撮影、次にEPP、出血度、O‘LearyPCR(以下オレリーと略します)の診査を行いました。
2回目にME法の再指導のみを行い、3回目は、患者の習得度を観察した後、ME法指導後のデータとし、初回と同様の診査を行いました。
右写真は、今回患者指導に使用したME模型とME歯ブラシです。
ME模型は、最もプラークが残りやすいと思われる歯間部、歯頚部をcuttingすることで、患者のブラッシングすべき箇所を強調しています。
ME歯ブラシは、従来の歯ブラシに比べコンパクトで奥への挿入が容易になったと思われます。
左写真と右図は、今回使用した観察記録用チャートです。
各回ごとにカラー分けし、進行具合が色により即わかるようにしました。
資料とり項目、観察用チャート、記録用チャートの三枚から構成されています。
右図は、記録用チャートの一部です。
歯間部を唇側、舌側に分けるラインを中央にひき、6分割したチャートを使用しました。
左写真は、ブラッシング観察用チャートです。
唇側、頬側、最後臼歯遠心、上下前歯舌側、臼歯舌側の部位からなり、ME法に即した、具体的な磨き方が記録できるようチェック項目が設けられています。
右写真は、ME法を絵によって解説して指導用チャートです。
指導内容に均一性を持たせ、患者側では、ブラッシング方法のイメージが湧くように配慮しました。
なお、ME歯ブラシおよび模型、ブラッシング観察用チャート、6分割チヤート、指導用チャートは、ME法考案者である恵比須により作成されたのもです。
左図は、全被験者のオレリーの変化を示します。担当歯科衛生士別にカラー分けを施しました。
16名中、15名減少、内1名変化ありませんでした。
初回時の、最大値は92%、最小値34%で、平均値65%でした。
3回目の最大値は51%、最小値は13%で、平均値28%となりました。
平均値で65%から、28%の改善が見られました。
右図は、出血度の変化を示します。初回時の平均値16%から、3回目平均値8%と改善が見られました。
16名中、1名オレリースコアに変化のなかった症例を紹介します。
49歳女性です。
左写真の上は、初回の右上頬側の歯肉です。
5にクレフト、3に擦過傷が見られます。
下は、6週間後の歯肉です。
クレフト、擦過傷が消え、歯肉への過剰な刺激がさけられたことが分かります。
スコアに変化はありませんが、歯間部プラークの量は、減少し歯肉の改善が見られました。
右写真は、ブラッシング観察記録です。
歯ブラシの当てる角度は90度から歯牙方向45度と角度に変化が見られます。
ME法では臼歯舌側の「2方向磨き分け」が重要なポイントの一つです。
次は、その効果について示します。
23歳女性です。
左写真の上は、2回目来院時の臼歯舌側の染色状態です。
近心は染まらず、遠心にくっきりプラークが染まっています。
2方向磨き分けについて再指導しました。
下は、再指導から4週間後の染色状態です。
近心、遠心ともにプラークが除去されています。
右写真は、ブラッシング観察記録です。
2回目は歯ブラシを立てて使用していますが、反対方向からの挿入が見られません。
3回目は「2方向磨き分け」がされています。
引き続き、症例の変化を示します。
患者は53歳の男性です。
左図は、指導前のオレリースコアを示します。
ブラッシングは歯面にブラシを直角に当て、歯牙1歯分程度の往復運動を行うという、いわゆるスクラビング法を使用していました。
唇舌共、歯間部には、プラークがほとんど残っています。
右図は、ME法指導後のオレリースコアです。
右上口蓋側を除き、ほとんどの歯間部プラークが除去されています。
スコア値は、77%から22%と、大きく改善されました。
ME法指導後、最も変化の見られた右下臼歯舌側の状態を示します。
左写真は、指導前のもので、歯頚部、歯間部にプラークが残っています。
右写真は、3回目来院時の状態です。やや赤みは見られますが、プラークは除去され、6番近心根舌側の歯頚部は明らかにポケットの減少が見られます。
以上が、ME法による1月半(ひとつきはん)のブラッシング効果です。
本年(平成5年)6月20日 日本口腔衛生学会近畿中国四国地方会において発表いたしました。
次は、その後の経過を観察しましたので、一部紹介いたします。
左写真は、初回。
右写真は、3回目来院時から、さらに4か月後の状態です。
プラークは除去され、歯肉より出血がなくなりました。
前回残っていた発赤もなくなり、臼歯歯頚部歯肉がずいぶん引き締まってきました、
健康な歯肉を取り戻し、維持しているようです。
ME法を実施している患者さんに、感想を聞いてみました。
「1,ブラッシング後、すっきりして気持ちが良い。特に歯と歯の間がすっきりし、今までになかった感じである。」
これは、他の患者さんからも聞くことができました。
「2,なにげなく歯ブラシを動かすのではなく、確認しながら部位ごとに歯ブラシを動かすようになった。」
「3,無駄な動きがなく、短時間でブラッシングできる。」
という感想をいただきました。
同じ方の、下顎左右側舌側の状態です。
左右ともブラッシングは良好です。
臼歯舌側のプラーク除去は、歯ブラシ単独では困難だと思っていましたが、良い結果が得られたME法には驚きました。
次に、ブラッシング観察から得られたことについて紹介いたします。
日常の患者指導では、最後臼歯への歯ブラシ到達率が悪いように思います。今回の体験で、歯科衛生士による具体的な指導が欠けていたためではないかと気づきました。
左写真に示しますように、「いちばん奥の歯を磨いてください。」と言うと、このように大臼歯まで歯ブラシが入るべきですが、実際は、右写真のように、小臼歯あたりで歯ブラシがストップし、大臼歯まで届いてない場合が、多かったようです。
しかし、患者さんの最後臼歯に歯ブラシが届いているかどうか確認するのは困難です。
そこで、小臼歯と大臼歯へ歯ブラシを挿入する際、口元にどのような変化が現れるか観察してみました。
左写真は、小臼歯あたりで歯ブラシがストップしているところです。
左は模型、右は口元の状態です。ほとんど口元に変化は見られません。
右写真は、大臼歯に歯ブラシが到達しているところです。
左は模型、右は口元の状態です。歯ブラシの柄で、口角を押し広げるように挿入しています。
小臼歯と大臼歯では、歯ブラシの挿入方向に変化があることが分かりました。
今までは、「磨けていない」と言うばかりで、「挿入方向の変化についての具体的な指導」が抜けていることに気づきました。
皆さんは、日常の患者指導で最後臼歯を磨いて欲しいのに、小臼歯あたりで歯ブラシがストップしていることがありませんか?
そのような場合、患者さんにどのような指導をしていますか?
単に、「磨けていない」と言うだけで、歯ブラシの挿入方向についての指導が抜けていませんか?
では、次に、具体的なブラッシング指導の一例を紹介します。
左写真のように、ME法では、最後臼歯遠心をブラッシングするために横からの突っ込み磨きを指示しています。
こうすることで、右写真のように、最後臼歯遠心をブラッシングすることができ、かつ最後臼歯の位置を認識することができます。
その結果患者さんより指導後の感想を聞くと、
「こんなところまで磨いたことがない。」
「言われてはじめて一番奥の歯にきづいた。」
という感想で、最後臼歯の位置を認識することができたようです。
先ほど言ったように、歯科衛生士による具体的な指導が欠けていたことに反省させられました。
従来の歯ブラシに比べ、ME歯ブラシは、奥歯への挿入が容易になりました。
しかし、今までの習慣がぬけず、最後臼歯への歯ブラシ到達が不十分なことが多いため、患者のブラッシング観察と継続指導が必要だと思われます。
最後に、電動歯ブラシの応用についてお話します。
電動歯ブラシは、短時間でプラークを除去する便利な器具として関心が高まっています。
近頃では、患者さんから、その効果についてよく尋ねられます。
また、実際に使用している患者さんもありますが、清掃状態は良くありません。
そこで、患者さんが、電動歯ブラシをどのように使用しているか観察することにしました。
ブラッシング方法は、毛先を歯牙表面に直角に当て、なでるように使用していました。
左写真の模型で示しますように、毛先が歯牙の豊隆部や歯肉にあたり歯間部へのブラシ到達は期待できません。
そこで、歯間部のプラーク除去に有効なME法を応用してみました。
右写真の模型で示すように、ME法では歯間部に毛先が入りやすくなっています。
指導によりプラークが除去され、約二週間後には、臼歯頬側にスティップリングが見られるようになりました。
左写真のように、電動歯ブラシを使用する多くの場合は、毛先の青いマーキングが示すように、歯牙表面と歯肉の膨隆の高い部分に強くブラシが接触するため、歯牙の摩耗、歯肉の過剰な退縮が心配されています。
右写真のように、ME法では歯間部に毛先が入り込み、かつ歯肉に脇腹が当たるように用いますので、歯肉への過剰な刺激が避けられます。
左右写真は、ME法による上下唇側部のブラシの当て方です。
毛先が切端方向に向くよう45度に当てています。
今後、電動歯ブラシについての知識を深めていく必要がありますが、現状ではME法が最適だと思います。
左右図は、ME法を一定期間指導した結果のまとめです。
⑴歯間部、歯頚部のプラークコントロールに有効。
⑵プラークの付着しやすい部位への対策が講じやすい。
⑶指導者間のばらつきが少ない。
⑷特に、臼歯舌側に有効。
⑸患者さんが、一歯、一歯確認しながら磨くことができる。